妖しい法律(その5)~結婚適齢期の法的真実~

結婚には適齢期という嫌な言葉があるらしく,晩婚化とか結婚氷河期と言われる今の時代には,適齢期の年齢幅も上がってきているようです。

誰がいつ結婚しようがしまいが余計なお世話ですし,その人にとっては結婚したそのときが適齢期でしょ,って思うのですが……。

 

もっとも,それは上限年齢の話であって,下限は別です。

たとえば,イスラム法の世界では9歳の女の子が結婚できたりするところもあるのですが,さすがに国際的には批判を受けることがあります。

要するに,世界のほとんどの国家で,おおむね肉体的に成熟して大人になったと考えられる年齢で一定の線を引き,結婚の下限年齢が定められています。

これを法律用語で「婚姻適齢」と呼びます。

 

前回も書きましたが,日本では「男は,十八歳に,女は,十六歳にならなければ,婚姻をすることができない。」という条文で,婚姻適齢が定められています(民法731条)。

これに反する婚姻は,取り消しの対象になります。

 

どうして男と女で婚姻適齢(結婚の下限年齢)が違うのでしょうか。

 

女性のほうが肉体的成熟が早いからと説明されることもありますが,後付けの屁理屈ですね。

立法に至った経緯から考えられる本音は,「親が自分の娘を一年でも早く(若く)嫁にやれるようにしておくため」なのです。今考えると,時代錯誤な政略結婚や人身売買みたいな遠い世界に感じるかもしれませんが,民法制定時には,若い女性(娘)がその家の財産や商品のように扱われた時代が,まだ終わっていなかったのです。

 

これ,男の側から見たら,「少しでも若い娘を嫁にもらえるようにしておくため」なわけです。「17歳や18歳じゃ嫌だ! 16歳がいい!」という(金持ち)男の欲望に答えられるように法律を作ったのだと,言えなくもありません。

さすがに妖しすぎるでしょ?

 

憲法14条は,法の下の平等を定めています。

合理的な理由もないのに男女で婚姻適齢を差別している民法731条は,憲法14条に反する違憲の法律です。

婚姻適齢は,男女とも同じ年齢にすべきです。

 

だからこそ,18歳を成年として,成人したら婚姻も契約も就職も飲酒も喫煙も肉体関係もすべて自由,選挙権も与え,大人として刑事責任も取らせるようにすればいいのです。

 

逆に,日本国民が成人年齢を20歳のまま維持している間(日本国民の代表である国会が法改正をしない間)は,20歳未満の少年(未成年者)を国家が十分に保護しなければいけません。

少年法だけを取り出して批判するようなことは,間違いです。

大人としての権利を奪っておいて,大人と同じように責任を取れと叫ぶのは,卑怯者のすることです。