有名な「ウサギとカメ」の昔話をご存じですよね。
「もしもしカメよ,カメさんよ」の童話イメージが強くて,つい日本の昔話のように思えますが,もともとは「イソップ物語」の輸入品です。
『歩みののろさを兎から馬鹿にされた亀は,競走での勝負を挑みます。
やはり兎は圧倒的に速く,余裕をかまして途中で昼寝。
兎が寝過ごす間に,亀はゆっくりと着実に進み続け,遂には先にゴールして勝利!』
という物語ですね。
では,この話の主役は誰だと思いますか?
昔は,ウサギだったようです。
明治時代の国語の教科書には,ズバリ「油断大敵」という題名で,このウサギとカメの物語が載っていました。自信過剰や油断を戒める教訓を読み取るわけです。
しかし,最近では,どちらかというとカメが主役とされています。
真面目にコツコツと頑張る人が最後には勝つというようなメッセージを受け取るんですね。
私は,いずれの解釈も間違いだと思います。
もし,ウサギを主人公だと考えるなら,油断以前の問題です。
だって,ちょっと冷静に考えてください。こいつ(ウサギ)は,人格(ウサギ格)がゆがんでいますよ。
ウサギは,意味も無くカメを誹謗中傷してわざと逆上させ,前後の見境のなくなったカメが苦し紛れに勝てるはずのない勝負を挑んで来たとみるや,そのくだらない勝負に嬉々として応じています。これは,勝って当然の勝負に勝ち,カメの「のろまさ」を公衆の面前で暴き立て,ここぞとばかりにカメを思いっきり馬鹿にしてやろうという企てです。カメに対して,計画的に徹底した精神的追い込みをかける「イジメ」そのもののやり口です。
この話から,「ウサギは油断さえしなければ勝てて万歳だったね」なんていう教訓を読み取る人は,どうかしてるんじゃないでしょうか。
また,もしカメを主人公だと考えるなら,カメはただのアホです。
だってそうでしょう。カメが挑んだ勝負に,客観的な勝ち目がありましたか?
いいえ。勝てるわけがありません。
カメは利口で,ウサギがきっと油断するに違いないとプロファイリングで読んでいたのでしょうか?
いいえ。ウサギが油断しても,それだけではカメは勝てません。
たとえ昼寝をしても,それでもカメが勝てるとは限りません。
ウサギが「たまたま寝過ごしてしまった」から,カメは偶然に勝てたんです。
カメは,ウサギが油断することまではプロファイリングできても,昼寝してしまうとか寝過ごしてしまうかどうかなんて,まったくのウサギ次第。カメにはコントロールできない事情です。
カメは,怒りにまかせて勝てる見込みのない勝負を挑み,たまたま勝ってしまっただけなのです。
勝てるはずのない勝負を挑んでも真面目に頑張ればきっと勝つに違いないなんて,そんな大嘘を教え込んじゃいけませんね。
では,カメはどうすればよかったのでしょうか?
カメはウサギに対して,水泳(潜水)で勝負を挑むべきでした。
これは,特に中小企業のビジネス戦略における極めて重要なヒントを含んでいます。
敵を知り,己を知る。自分の強みを活かし,敵の弱い(いない)ところで勝負する。
それができれば,必ず小よく大を制するでしょう。
ただし,カメがウサギに一服盛ったという可能性も,私としては捨てきれないところです。
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