平成29年5月30日,「個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部を改正する法律案」が全面施行されました。
これが,ここ最近,まじめな中小事業者を泣かせている,いわゆる「改正・個人情報保護法」というヤツです。
え? 改正法の対応に小規模企業が困っていることは分かるけど,個人情報保護法のいったい何が妖しいんですか?
……いやいやいや。上に書いた個人情報保護法の正式名称の「及び」以下の部分,「行政手続における」うんぬんというのは,いわゆるマイナンバー法(個人番号法)のことです。
マイナンバーなんてもう,それ自体が妖しさマックスというか,お先真っ暗な泥沼監視社会の入口はこちらですよ的な法律なわけです(「出口はこちら」の案内板が共謀罪です)。
なので,マイナンバー法と不可分一体の法律である個人情報保護法が妖しくないワケがないのです。
ということで,妖しいのは確かなのですが,マイナンバーが本領を発揮するまでは,この法律の本当の妖しさは誰にも分からないでしょう。
……「誰にも」って,じゃあ,お前もかっ!
って感じですね。
まあ,実際そうなんですが,そうだとは口が裂けても言ってられないのが弁護士というお仕事なのです。
何だかよく分からないことを言っていますが,要するに,ホントの妖しさはこれから時間をかけてみんなが分かることだろうけど,現時点でも,妖しい点はいっぱいあるぞということです。
たとえば,個人情報保護法第2条は,個人情報を「生存する個人に関する情報」に限定しています。
死んだ人に関する情報は,個人情報ではないということです。
つまり,私たちに関するあらゆる情報が,死後,いきなり「個人情報」ではなくなり,保護の対象外にされてしまうということです。
男子諸君!
この妖しさに貴兄は気付くか!?
ということはつまり,我々が皆,等しくベッドの下や押し入れの奥の段ボールの中に隠しているであろうあんなこんなも,死んだら開けずに燃やしてくれと遺言を残すようなパソコンのハードディスクの中身も,全部まるごと,死後もはや個人情報じゃなくなっちゃうかもしれない。死後の男子の本懐(プライバシー)は一切保護されないかもしれない,ということなのだ!
これを妖しい法律と言わずして何と言うのか!!
……などという謎の男子の本懐論はともかくとして,死んだらもう個人情報として保護されない,というのもどうなんでしょうか。
立法理由としては,保護すべき個人情報の範囲を適切に制限(狭く)することで,企業側の過剰な負担とならないようにする,などということも言われます。
う~ん。
共謀罪と同じで,妖しい法律を作ろうとする人たちは平気で嘘をつくので,気をつけなければいけません。
個人情報を取得している通常の企業に,その人が死亡したらもう個人情報として扱わなくていいよ,などと法律が言っても,企業側の負担の軽減にはなりませんよ。
だって,その人が死亡したことを企業はどうやって知るのでしょうか?
死亡したと明確に分からない限り,生存している個人の情報としてずっと管理し続ける必要がありますよね。
そうすると,個人情報保護法を立法した人たちは,今ではない近い未来に,いずれ個人の死亡に関する戸籍などの情報を企業がいつでも知ることができる時代が来る,という前提で考えていることになりそうです。
戸籍,住民票,銀行口座,不動産,勤務先と収入,支出(つまり買い物の金額と内容)などのすべての情報が紐付けされて個人情報としてひとまとめに管理され,国家によって検索可能となる。
そのうえで,個人情報の一部は,国家様がお作りくださったありがたい法律のおかげで,何とか保護していただける。
しかし,人が死んだら無に帰すので,すべての情報が保護から外れてしまう。
そういう暗い社会が想定されているような,全然想定されていないような……。
マイナンバー,特定秘密保護法,共謀罪は三点セットです。
これに戦争法と憲法改正が入ると豪華五点盛りになります。
今,4つめまで来ましたよ。
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